遺言状と共有物分割訴訟
複数の兄弟がある場合、兄弟の1人が高齢の親をそそのかし、全財産を自分に相続させる遺言状を書かせることがあります。
この対策としては、新たな遺言状により前の遺言状を撤回することはもちろんですが、高齢の親がアルツハイマー状態の場合は成年後見の申立をして、後見人をつけておくことが1つの対策です。
遺言をされ、親が死亡してしまった場合、訴訟で無効とするには親の遺言当時の遺言能力を具体的に立証しなければなりませんが、既に施設等に入所している場合は、比較的施設の協力により、能力の立証が可能となります。
遺言の効力が争えない場合、他の兄弟には遺言によっても侵害できない法定相続分の半分の遺留分がありますので、1年以内に遺留分減殺請求をしなければなりません。この意思表示は専門的ですので、弁護士に依頼するのがよいです。
遺留分減殺請求をすると遺産は、1人占めにした兄弟と遺留分減殺請求をした兄弟との共有となります。預金等の金融資産は分割可能ですので、まだ引き出されていないければ直接金融機関に直接払戻請求をします。金融機関によっては、相続人全員の印鑑がそろわないと払戻しを拒否するところもあり、その場合は訴訟を提起すれば払われます。
不動産については共有物分割請求訴訟となりますが、訴訟前に遺産分割調停の申立をすることもできますが、遺産分割の審判をすることについては、家庭裁判所は消極的で調停で話し合いができなければ共有物分割訴訟による解決となります。
共有物分割訴訟では、民法の規定では現物分割か競売しかありませんが、最高裁判所は、不動産の取得を希望する人が、賠償金を払う十分な資力のある場合に、賠償金の支払と引き換えに不動産をその人のものとする全面価格賠償方式の分割を認めています。
このため不動産鑑定を行い、支払額を決め、裁判所で和解交渉を行うことにります。和解ができなければ、賠償金を支払う資力あることを立証して判決をしてもらうことになりますが、銀行融資を利用するには抵当権の設定等の問題がありますので和解によるのが無難です。