遺産の使い込み
一男さんは、長男です。離婚後、認知症の母を自宅に引きとって同居し、別の女性と再婚して、後妻に認知症の母のめんどうみてもらいました。
母は、認知症となる前から、
「母の財産は全て一男さんにあげる。」
「母の財産は、カマドの灰まで一男のもの」
と母は、言っていたので、一男さんは、母の定期預金を解約して、認知が出て、独り暮らしができなくなった母を自宅にひきとった際のマンションのリホーム費用や認知がひどくなって自宅でみれなくなった後に入所した病院代や老人ホームの費用、子供の大学の費用、母の葬儀代等にあてました。
母が亡くなると妹が弁護士を依頼して、母の全預金の10年分の取引履歴を調査して、母が認知となった後に解約した預金も遺産の中に入れて2分の1とするべきである。
一男さんが使ってしまって、妹等の取り分である遺産2分の1なくなっているので、一男さんに足りない分800万円を払えと主張してきました。
家庭裁判所で遺産分割調停をしましたが、話し合いはできませんでした。
遺産は預金のみで、当時の裁判所の考えでは、預金は当然分割で寄与分を認める余地もないので、調停は取下げ、解約した預金の引き出しの裁判となってしまいしました。
裁判所は、一男さんの、母を引き取るためにリホームしたとの主張を認めず、後妻と再婚のためのリホームで母のためではないという妹の主張を認め、一審判決では、一男さんは、解約した母の預金の2分の1を返金しなければならなくなりました。
控訴審で、返金額を2割ほどまけてもらって妹と和解しました。
妹は残った定期預金と一男さんからの返金分を手にし、一男さんの手元には1円の遺産も残りませんでした。