成年後見
相続人の中に認知症の人がいる場合
まだ、成年後見、保佐、補助といった法定後見の手続をしていない場合と成年後見、保佐、補助の開始決定が出ている場合とでやるべきことが変わってきます。
成年後見、保佐、補助といった法定後見の手続をしていない場合
① 遺産分割協議ができる場合
認知症と言っても、色々な段階があり、軽い物忘れや、日によって、しっかりしている日としっかりしていない場合があります。
遺産分割協議のためには自己の財産を管理する能力が必要で、一般的には、小学校低学年程度の財産管理能力があればよいと言われています。
したがって、認知症の人でも、遺産の内容を理解し遺産、分割内容を理解して、分割案に同意する能力があれば、遺産分割協議をすることができます。
この点、参考となるのが公正証書遺言作成の際の公証人の認知に対する態度です。公証人は、遺言者に認知があり、財産管理能力に疑いがある場合であっても、公正証書遺言を作成し、その効力に関する争いは後日遺言無効確認の訴えの中ですればよいと考えています。
② 遺産分割協議ができない場合
認知が進行し、財産管理能力がない場合は、法定後見の申立をして、そのとおり法定代理人が遺産分割協議をすることになります。
法定後見の申立のためには、医師の診断書が必要ですので、主治医の医師に依頼して書いてもらうことになります。
成年後見、保佐、補助の開始決定が出ている場合
① 成年後見
成年後見の場合は、後見人が認知症の人に代わって、遺産分割協議をすることになります。
② 保佐
保佐人の同意を得て本人が遺産分割協議をします。具体的には、遺産分割協議書に保佐人が同意する旨記載して、署名押印します。
保佐人の同意がない協議書は、保佐人が取り消せます(民法13条1項6号)。
遺産分割協議について代理権付与の審判がある場合は、成年後見同様、保佐人が遺産分割協議をすることになります。
③ 補助
補助開始の審判で、遺産分割協議が、同意権付与や、代理権付与の対象となります。同意付与の場合は保佐と同様です。代理権付与の場合は、成年後見と同様補助人が代理して遺産分割協議することになります(民法17条1項、15条3項)。